ぷすっ

肛門が逆鱗ポイントであると何が問題かと謂えば、お察しの通り医者に掛かる時である。
人間の体温は幼児以上の場合、舌下か脇で測ることが普通だ。
しかし、犬の場合は口を閉じていろと謂うことも、脇を押さえておけというのも無理な話。
従ってシッポをひょいっと掴み上げ尻穴へ挿すことになる。
先日、予防注射でどうしても体温を測らねばならないと謂うことになった。
飼い主は既にドキドキである。彼は良い具合にヘタレなので診察台に上がると"もう帰ろう、もう帰ろうよ"と私に縋り付いて色々とそれどころではなくなっている。
いつも飼い主保定で十分なので、このままイケルかと思い獣医と体温計が見えないように抱きかかえる…

ぷすっ

………豹変した。何というか筆舌に尽くしがたい顔で本人必死に怒り狂っている。
可笑しい、これはいかんと思うのだが可笑しくて力が抜ける。勿論、小型犬であろうと本気で嚼まれれば相当に痛い。しかしこちらは彼が幼犬の時に死闘を繰り広げているので今更全然恐くない。
今や彼も人を嚼んではいけないのは学習しているので、人は嚼まないようにしながらも必死に抵抗する。結局プロの助手の方に保定して頂いた。
そして肝心の注射の時はと謂えば、全くのノーリアクション。
ホント申し訳ない、次は(笑い出さずに)自分で押さえます。